今回の話は各都道府県に張り巡らされている都道府県道(あとは面倒なので「県道」と記述します)についての話です。
(2−1)県道と主要地方道の違い
県道とは、各都道府県の知事がそれぞれの都道府県内の区域で議会の議決を経て、路線を認定した路線のことをいい、当然ですが東京都では「都道」,大阪府と京都府は「府道」,北海道では「道道」といいます。県道の定義は主に以下に該当する路線と決められているようです。
(1) 主要地(=市または人口5,000人以上の町のこと)を結ぶ道路
(2) 主要な港湾,空港,駅,観光地を結ぶ道路
(3) (1)や(2)と高速道路,一般国道を結ぶ道路
県道の建設,維持管理は基本的に都道府県(政令指定都市は市)が行いますが、国土交通大臣が指定する重要な県道は「主要地方道」と呼ばれています。道路地図や各メーカーが製造しているナビシステムでも、おおむね主要地方道は緑色で一般県道は黄色で表示して区別しています。例外的なものとして、京都市は市道が主要地方道になっている路線が8路線あります。
主要地方道は、昭和29年に最初の指定が行われ、現在までに6回の指定が行われていますが、3回目以降は国道の追加指定のおおむね1年後に実施されており、国道と主要地方道の見直しはほぼセットになっています。したがって主要地方道も平成5年以降は見直しされていません。
(2−2)路線名と標識
県道(主要地方道)は、以前は「○○××線」のように起点と終点の場所を取って名前をつけたり、「●●停車場線」というように駅などが起終点の場合はこのような名前にして名称だけでしたが、管理も大変なので現在はすべての都道府県道に路線番号があります。昭和46年に六角形の路線標識(=写真1)が決められ、各都道府県で順次設置し、現在では全ての都道府県に標識があります。道路地図でもこの路線番号の標識は基本的に明記されています。道路ファンの間では国道の「おにぎり」に対して、「ヘキサ」という愛称もある標識です。
県道も国道以上に重複区間が多く、県道同士だけでなく国道と県道の重複区間などもありますが、写真2や写真3で示すような串刺しで表示しているような場所はどちらかというとレアケースで、上位の県道番号または国道の標識しかないところが大半です。
写真4のように交差点での進路を示す標識は非常に増えてきており、一般県道は黄色・主要地方道は緑色で区分けしています。国道の赤色も含めてこの色分けは全国統一になっています。
写真5と写真6は福島県に特有の標識で、県道番号を入れる場所に路線名を書いていたり、大小二段重ねで路線名と路線番号を表記している標識を県内のあちこちで見かけたので、参考までに掲載しておきます。千葉県の標識も全国標準とは少し変わっているし、大阪府は全て英語表記の標識も見かけることがあります。
写真1 | 写真2 | 写真3 |
写真4 | 写真5 | 写真6 |
(2−3)路線番号
路線番号は国道と比べると若干付け方が複雑になっており、番号の統合や国道への昇格などの様々な理由で欠番も多数存在しています。まず1〜100までの番号は主要地方道に充てられるため、各都道府県で100路線もないところは欠番になっています。
ただし、主要地方道だけで100路線を超える北海道は199号線までが主要地方道になっており、福岡県も1〜100まで全部使っているため、151号線も主要地方道になっています。東京都は23区内で完結する都道が「特例都道」という主要地方道と同等の扱いになっており、これは300番台になっています。京都市のように市道が主要地方道になっているものも3桁の番号になっています。沖縄県は、アメリカ合衆国の施政時代の名残で一般県道と主要地方道の番号は混在しています。
101番以降の付け方は各都道府県でバラバラです。各都道府県毎で一定のルールを番号を割り振っているケースが多いのですが、やっかいなのが隣接する都道府県にまたがる場合です。現在は主要地方道も含め極力同じ番号にするように調整しており、利用者の混乱を防ぐようにしております。従って各都道府県内では同じ番号を使わないようにして、かつ県またぎでは同じ番号にするようにしています。
北海道は陸続きの県境がないため県またぎの路線がありませんが、面積が広いため1000番を越える路線番号もあります。あと、都道府県によっては神奈川県や福井県のように幹線国道と重複する番号は混乱をさけるためわざと欠番にしているところもあります。
(2−4)特徴的な県道
路線数が国道に比べるとはるかに多いため、国道では考えられないようなものもたくさんあります。
例えば、不通区間,海上区間などは非常に多く存在するし、国道ではありえないような短いもの、林道顔負けのダート区間が残っているようなもの、車が通行できないような細い道、国道339号線みたいな階段になっているもの、自転車道(サイクリングロード)が県道になっているものなど、多種多様です。私自身も国道全路線を調査するだけでも大変ですから、調査の手を県道まで伸ばすつもりはほとんどありません。住所のある京都府ぐらいは、国道で目処がついてからチャレンジしてもいいかな?という気持ち程度です。
データとしてわかっているものを下記にいくつか紹介します。
<1> 3ヶ所以上の都道府県にまたがっている都道府県道=全国で13路線しかありません
路線名 | 路線番号 | 通過都道府県 | 総延長 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 佐野古河線 | 9 | 栃木・群馬・埼玉・茨城 | 18.1km | 4県またぎは日本でここだけ |
2 | 佐野行田線 | 7 | 栃木・群馬・埼玉 | 23.1km | |
3 | 足利邑楽行田線 | 20 | 栃木・群馬・埼玉 | 17.9km | |
4 | 境杉戸線 | 26 | 茨城・千葉・埼玉 | 不明 | |
5 | 松戸草加線 | 54 | 千葉・東京・埼玉 | 12.5km | |
6 | 高速湾岸線 | 294 | 千葉・東京・神奈川 | 62.1km | 首都高速湾岸線のこと |
7 | 上野原八王子線 | 521 | 山梨・神奈川・東京 | 28.4km | |
8 | 山中湖小山線 | 730 | 山梨・神奈川・静岡 | 16.9km | 静岡県は路線番号が147 |
9 | 飯田富山佐久間線 | 1 | 長野・愛知・静岡 | 91.0km | |
10 | 佐屋多度線 | 125 | 愛知・岐阜・三重 | 11.4km | |
11 | 上野南山城線 | 82 | 三重・奈良・京都 | 21.9km | |
12 | 八女小国線 | 115 | 福岡・大分・熊本 | 58.5km | |
13 | 竹田五ヶ瀬線 | 8 | 大分・熊本・宮崎 | 82.5km |
<2> 延長が100km以上の都道府県道=国道は253路線もあるのですが、県道は全国でたった4ヶ所です
路線名 | 路線番号 | 都道府県 | 総延長 | 備考 | |
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1 | 佐渡一周線 | 45 | 新潟 | 169.6km | 佐渡島の外周部になる |
2 | 根室浜中釧路線 | 142 | 北海道 | 163.1km | 道道123号線・国道44号線の重複区間を除くと106.8km |
3 | 名瀬瀬戸内線 | 79 | 鹿児島 | 100.7km | 奄美大島の西海岸を走る県道 |
4 | 浜田八重可部線 | 5 | 島根・広島 | 100.3km | 国道261号線・国道54号線の重複区間を除くと76.8km |
<3> 延長が10m以下の都道府県道=国道では考えられないような短さの県道があり、道路幅の方が長いです
路線名 | 路線番号 | 都道府県 | 総延長 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 上田停車場線 | 162 | 長野 | 7m | 駅ロータリーから県道77号線までの区間 |
2 | 安登停車場線 | 204 | 広島 | 10m | 駅ロータリーから国道185号線までの区間 |
<4> 東西南北の最果て
路線名 | 路線番号 | 都道府県 | 総延長 | 備考 | |
最北端(全国) | 上猿払清浜線 | 889 | 北海道 | 37.0km | 国道238号線の方が最北端(=宗谷岬)にある |
最北端(本州) | 薬研佐井線 | 284 | 青森 | 不明 | 国道279号線の方が最北端(=大間崎)にある |
最東端(全国) | 根室半島線 | 35 | 北海道 | 46.2km | 納沙布岬のすぐそばを走ります |
最東端(本州) | 重茂半島線 | 41 | 岩手 | 35.8km | とどヶ崎のすぐそばを走ります |
最南端(全国) | 黒島港線 | 213 | 沖縄 | 2.4km | 有人島最南端の波照間島には県道がない |
最南端(本州) | 潮岬周遊線 | 41 | 和歌山 | 10.3km | 潮岬のすぐそばを走ります |
最西端(全国) | 与那国島線 | 216 | 沖縄 | 14.4km | この島が日本最西端にあるため |
最西端(本州) | 永田郷室津川棚線 | 245 | 山口 | 不明 | 山口県道の最西は角島を走る275号線 |
(2−5)各県道の路線数=2011年現在の状況です(Wikipediaのデータから調査)
とりあえず、2011年にカウントした数字を掲載しますが、国道と違い、国道のバイパス開通に伴う旧道が県道に格下げ,逆に市町村道への格下げによる県道の廃止,高速道路の開通によるインターへの取り付き道路開通などが随時行われており、路線数は変わります。また、日本全国の合計路線数は県をまたがる路線が多数存在するため、この一覧表の47都道府県を足した数でもないことは、ご理解下さい。ちなみに「主要道」=主要地方道の路線数で、「一般道」=一般県道の路線数を示しています。市道が主要地方道になっている路線はカウントしていません。
地区 | 都道府県 | 主要道 | 一般道 | 地区 | 都道府県 | 主要道 | 一般道 | 地区 | 都道府県 | 主要道 | 一般道 |
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北海道 | 北海道 | 151 | 740 | 東海北陸 | 静岡県 | 73 | 242 | 中国四国 | 岡山県 | 68 | 304 |
東北 | 青森県 | 47 | 188 | 長野県 | 84 | 322 | 広島県 | 76 | 285 | ||
秋田県 | 56 | 134 | 愛知県 | 80 | 390 | 鳥取県 | 43 | 187 | |||
岩手県 | 50 | 197 | 岐阜県 | 75 | 223 | 島根県 | 51 | 193 | |||
山形県 | 61 | 192 | 新潟県 | 88 | 449 | 山口県 | 60 | 204 | |||
宮城県 | 65 | 172 | 富山県 | 63 | 217 | 徳島県 | 43 | 167 | |||
福島県 | 76 | 293 | 石川県 | 53 | 167 | 香川県 | 46 | 146 | |||
首都圏 | 茨城県 | 69 | 253 | 福井県 | 38 | 165 | 高知県 | 48 | 147 | ||
栃木県 | 71 | 222 | 関西 | 三重県 | 66 | 249 | 愛媛県 | 54 | 192 | ||
群馬県 | 72 | 202 | 滋賀県 | 52 | 222 | 九州 | 福岡県 | 101 | 355 | ||
埼玉県 | 90 | 255 | 京都府 | 75 | 229 | 佐賀県 | 43 | 137 | |||
千葉県 | 93 | 212 | 大阪府 | 55 | 159 | 長崎県 | 53 | 113 | |||
東京都 | 66 | 221 | 奈良県 | 39 | 136 | 大分県 | 45 | 199 | |||
神奈川県 | 48 | 124 | 和歌山県 | 48 | 145 | 熊本県 | 55 | 199 | |||
山梨県 | 34 | 137 | 兵庫県 | 98 | 393 | 宮崎県 | 48 | 151 | |||
鹿児島県 | 61 | 222 | |||||||||
沖縄県 | 25 | 118 |