(テーマ3)その他の道    

このテーマでは、国道,県道に続く道として存在する各道路について説明しています。

(3−1)市町村道
各市町村において、市町村長が議会で議決して認定した路線のことをいいます。当然ですが、市にあるものは「市道」,町にあるものは「町道」,村にあるものは「村道」といいます。東京都に限って23区は特別区なので「区道」というものが存在しますが、残りの政令指定都市は、区としての道路はなく、全て「市道」になっています。(あとは面倒なので「市道」と表記します)
私もある文献を読んで知ったことなのですが、この「市町村道」というのは、皆さんが普段通るような住宅街の1本1本の筋も該当するケースが多いので、日本の道路法で適用される道路の121万qのうち、市町村道は84%も占めているのです。

市道は地図では色がついていないので区別はわかりませんが、「幹線道」と「一般道」に分かれているみたいです。また、幹線道も「一級」と「二級」の区分があり、その辺の基準は明確ではありませんが、国道や県道並みに整備された立派な道路は「幹線一級道路」と言って良いのではないでしょうか?
政令指定都市の仙台市,横浜市,川崎市,京都市,大阪市は市道が主要地方道として、一般県道以上の扱いになっている路線があり、ピックアップすると以下の表の通りです。

路線番号 路線名 備考 
仙台市90号線 仙台南環状線 狭路の市道をつないだだけの路線。途中にダートや階段区間もある。
川崎市(番号なし) 幸多摩線 ほとんどが多摩川の堤防沿い
川崎市(番号なし) 野川菅生線   
横浜市17号線 環状2号線 ほとんどが片側3車線の幹線道路
横浜市18号線 環状4号線  環状4号線の一部区間のみが主要地方道に指定されている
横浜市80号線 横浜駅根岸線  
横浜市81号線 藤棚伊勢佐木線  
横浜市82号線 山下本牧磯子線  
横浜市83号線 青木浅間線  
横浜市84号線 保土ヶ谷宮元線  
横浜市85号線 鶴見駅三ツ沢線  
京都市181号線 京都環状線 東大路通・北大路通・西大路通・十条通
京都市182号線 蹴上高野線 白川通・北大路通
京都市183号線 衣笠宇多野線 観光道路・一条通
京都市184号線 宇多野吉祥院線 天神川通・葛野大路 
京都市185号線 勧修寺日ノ岡線 大石道
京都市186号線 嵐山祇園線 四条通
京都市187号線 鹿ヶ谷嵐山線 丸太町通
京都市188号線 観月橋横大路線 京都外環状線
大阪市(番号なし) 赤川天王寺線 上町筋
大阪市(番号なし) 大阪環状線 都島通・今里筋・南港通
大阪市(番号なし) 上新庄生野線 城北筋 有料の菅原城北大橋を含む
大阪市(番号なし) 九条梅田線  
大阪市(番号なし) 四天王寺巽線 勝山通
大阪市(番号なし) 築港深江線 中央大通 阪神高速東大阪線・大阪港線の側道
大阪市(番号なし) 天神橋天王寺線 天神橋筋・松屋町筋
大阪市(番号なし) 中津太子線 城北公園通
大阪市(番号なし) 浪速鶴町線 大浪通・大正通
大阪市(番号なし) 難波境川線 千日前通
大阪市(番号なし) 南北線 四ツ橋筋
大阪市(番号なし) 浜口南港線 住之江通
大阪市(番号なし) 福島桜島線 北港通
大阪市(番号なし) 福町浜町線 姫島通

しかし、現実の市道は、住宅街の路地みたいな道路や、ひいては登山道のような道も多くあり、路線名や番号については各自治体では定められているかもしれませんが、通称名のある道路以外は実際の道路に表記されることはないことが多いです。私の住んでいる京都市内などは住民が地名でなく通り名で場所を特定させる習慣があるために、数え歌があるくらい路地に近い通りまで愛称があるのですが、普通は通り名はないところの方が多いと思います。
ただ、全国を走り回ってきて、ゲットした市町村道のいろいろな標識を少し紹介します。(順次追加予定)
「ここにもあるよ」という情報がありましたら、メールでも教えていただければ、お仕事の全国巡業の際に立ち寄ってみます。

【写真1】福島県南相馬市で定められている市道
の標識です
【写真2】福島県川内村で定められている村道
の標識ですが、県道のヘキサの色逆バージョン
ですね
【写真3】愛知県設楽町で見かけた町道の標識
です。写真2以上に県道のヘキサに似ています。
   
【写真4】宮崎県美郷町で見かけた町道の標識
です。県道のヘキサに対して八角形になってい
ます。
   

(3−2)農道
簡単に言えば、「農作業をするために作られた道」で、管轄は国土交通省ではなくて農林水産省になるみたいです。従って、道路法などによる縛りもありません。
田んぼや畑の中にあるあぜ道みたいな農道をイメージする人が多いと思いますが、最近は「農免農道」「広域農道」などの標識で、一般の国道や県道顔負けの立派な道も見ることが多いと思います。またその農道を抜け道として利用していることも多々あると思います。
しかし、「農道」であるため、あくまでも農作業をする人を優先的に作られた道路なので、トラクターやコンバインのような低速の農業機械が通ることもあるし、作物や肥料などの積みおろしをするために、トラックを道路脇に駐車することもあるので、それを「スムーズに通行するために邪魔だ」と考えるのは、お門違いです。
また、農道が格上げして市町村道や都道府県道になる事例もありますが、そういう形で認定されると「農道」ではなくなり道路法での管理も必要となってくるため、農作業している人が通行する車に逆に配慮しなくてはなりません。よほどの事例でない限りは農道は農道のままになっています。
★広域農道
 この言葉は比較的簡単で、複数の農村地域を結ぶ比較的距離の長い農道で、「スーパー農道」という名前のところもあります。国道や県道に並行している路線も多々あるため、一般の車両が抜け道として利用することも多々あるし、カーナビでも普通にルート指定されるケースが多いです。

★基幹農道
 広域農道に次いで重要な農道で、2009年以前は「農免農道」という言葉を用いていましたが、意味がわかっている人は限られていると思います。「免」というのは何かを免除する意味だろうと推察できますが、それが何かというと農業機械に使用するガソリンの揮発油税らしいです。しかし、ガソリンを販売する際にそれを区別することが困難なので、その揮発油税に相当する財源分を農道を造るためにあてがってできた道路を「農免農道」というようになりました。何かだまされているみたいですね。しかしこの財源確保の制度も廃止されたために、現在は「基幹農道」という言い方に代わっています。この道路も国道や県道の抜け道として利用する機会は多いと思います。

★一般農道
 上記2つ以外の農道のことで、田畑の間にあるようなあぜ道みたいな道路もここに含まれていると思います。

 
【写真1】広域農道(埼玉県比企郡) 【写真2】農免農道【北海道ニセコ町】 【写真3】一般農道

実は、京都府にはあまり有名な農道がなくて、実家の奈良県天理市には福住という高原地帯に広域農道があります。2車線の非常に快適な道路で、農道より普通の車が抜け道として利用していることの方が多いような気がします。和歌山県の国道24号線の北側に「紀ノ川広域農道」という33kmもある広域農道がありますが、あれは和歌山県のミカン畑を縫うような道になっていますが、完全な抜け道です。現在はその広域農道に並行するような場所に「京奈和自動車道(無料)」があるために、交通量も少し緩和されてきました。

(3−3)林道
農道と同じく、「森林の整備・保全をするために森林地帯に作られた道」で、これも管轄が農林水産省(=林野庁)になります。農道と同じく道路法での縛りはありません。
昔は木材の伐採に必要な資材や人材の移動手段は、人の足に頼ることが大半であるため、林道といっても人が通ることのできるようなあぜ道や登山道が大半でした。時代が経て木材の輸送にロープウェイのようなものや、森林鉄道みたいなものが主流となり、さらに時代を経て国産トラックの性能が向上してから、本格的に自動車が通ることのできる林道が建設されるようになりました。
農道と同じく、林道が格上げして市町村道,都道府県道,場合によっては国道に格上げになる事例もあります。明らかに農道よりは格上げになる事例は多くあり、国道309号線の「行者還林道」は格上げによる国道不通区間解消の例は代表的です。

★広域林道
 複数の山村地域を結ぶ基幹的な林道で、上高地乗鞍スーパー林道(旧有料道路),白山スーパー林道(有料道路),剣山スーパー林道(87.7kmもある日本最長の林道)など全国的に有名な路線もあります。景観も良いところもあるため、観光スポットとして使われる場合もあります。

★併用林道
 林業だけの目的でなく、地元の市町村が借り受けて、市町村道,都道府県道の肩代わりとして利用しているものをいいます。この林道は一般車両も自由に通行できます。一例ですが、国道152号線の2つの分断区間は、兵越林道,蛇洞林道という2つの林道で実質はつながっていますが、あれも併用林道の代表的な例です。

★一般林道
 林業従事者が専用に利用することを目的として作られた道が多く、道路自体の整備もダートや狭路のような場所が大半です。国道や県道の入口部分に柵や鎖で通行を封鎖している場所も多く見かけます。農道と違って、通り抜けができなく同じ場所に戻ってくるしかないケースが多いこと、悪天候時に道路崩落などで通行不能になり閉じ込められる危険性が高い場所も多いことから、それを予防するために一般車両の通行を封鎖していると考えてもらえればいいかもしれません。

(3−4)港湾道
農業・林業と続けば漁業ですが、「漁道」なんていうものは存在しません。漁業の舞台は海や湖や川なんですから。でも漁業関係者や港湾の運送業者のために造られる道は存在します。漁港施設のための道路がそうで、道路法管轄の一般道路から、魚市場や漁港桟橋まで続くような道路のことをいいます。あまり一般車両が使うこともないので、林道ほどバリケートみたいなものはないものの、標識で「漁業関係者以外は立入禁止」みたいな看板を見かける道路はそれに該当すると見て良いかもしれません。例外的なもので、神奈川県の三浦半島先端にある「城ヶ島大橋(有料)」ですが、あれは漁港施設道路らしいです。

★臨港道路
 この言葉は良く目にすると思いますが、大きな港湾には大型トレーラーが往来するために幅4〜6車線もあるような広い道路が続く場所があります。これも道路法管轄外の道路なのです。幅が広いのは大型車両が往来する頻度が多いのと、一時的に待機できるように幅広の道になっています。一般車両も通行できるために、抜け道として利用される頻度も多いのも事実です。
 代表的な例でいえば、神戸市にある「ハーバーハイウェイ(有料)」も該当するし、東京や名古屋のような日本最大級の港湾地区もそういう道路はたくさん存在します。

(3−5)私道
 これは名前の通り、私人や企業が所有している土地を道路にしたもので、一般車両はその持ち主に許可をもらわない限り通行することはできません。身近な例で、ある方の家に行くために取り付けられた道で「私道につき立ち入るべからず」みたいな表示を見かけることはありますが、あれが私道です。大きな企業や学校の敷地内を移動する道路も私道です。
 日本で一番大規模な私道は山口県の宇部興産が所有する「宇部・美祢高速道路」という専用私道があります。全長は28kmもあり、道路地図でも点線で記載されています。美祢市にある石灰岩の採掘現場から宇部市港湾地区にある工場まで原材料を運ぶために造られた道路で、見た目は高速自動車国道と遜色ないくらいです。中国道を走って注意してみるとすぐ近くに同じような高速道路っぽいものをみかけますが、それが私道です。現在は、宇部市内の一部区間を一般車両の自専道に解放しています(=県道6号線:宇部湾岸道路のこと)